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​​MiCBT (Mindfulness Integrated CBT)
マインドフルネス統合認知行動療法)とは

 MiCBTはヴィパッサナー瞑想に認知行動療法を統合して作られた実証に基づく10〜12週間の心理療法で、個人セッションとグループセッションの両方への適用が可能です。MiCBTは、幅広い精神症状や年齢層、多様な文化圏に有効であり、さらに精神疾患の合併症状にも有効であるというエビデンスが示されていることに世界で注目されています。では、なぜ多くの精神疾患に有効なのでしょうか? それはMiCBTが、個々の症状よりも、さまざまな疾患の共通要因である「苦悩のメカニズム」そのものにアプローチしていくからです。そのため感情障害や人格障害、慢性疼痛、薬物依存、社会不安障害といった広範囲の疾患に有効というだけでなく、これまで治療法が異なるために治療が難しかった複雑な合併症にも効果があると実証されているのです。

​ MiCBTでは、ヴィパッサナー瞑想のマインドフルネスの鍵となる心の平静 (equanimity) と、内受容感覚(体内感覚)を発達させていきます。そして、この二つを両輪にして、私たちの人生に深く影響を与えるスキーマ1)や、苦しい対人関係場面などに曝露する実践を行います。同時に、私たちが苦しむのは、人生のあるがままを受け入れていないからであるという仏教心理学の考え方を学んでいきます。人生のあるがままとは、すべてのものは瞬間瞬間変化し、永遠に続くものはないという「諸行無常」や、すべてのものには実体はないという「諸法無我」などがあります。しかも、各セッションには、認知行動療法が組み込まれており、非常にシステマティックな心理療法となっています。そのようにして10回のセッションが完了した時には、主訴であった苦悩や症状から解放されているだけでなく、さらに意図せずして自己成長がみられ、より適応的に人生を生きることができるようになっていることをクライエント自身が発見して驚かれるような場面もよくみられるのです。

 

<もう少し詳しく知りたい方のために>

​ その共通要因の苦悩のメカニズムとは、「強化の共発生モデル」と呼ばれており、私たちが身体の内部で感じる「内受容感覚」をもとに説明されます。

 私たちは、何らかの出来事を知覚すると、個人的な価値観やスキーマ、自伝的記憶といったフィルターを通してその状況に対する評価を生み出します。そして重要な点は、その評価と同時に内受容感覚が発生し、その内受容感覚の質(快・不快)と強さ(自己言及的かどうか)に従って、反応が決定されるということです。心地よい感覚はそれへの執着と欲望へ、不快な感覚は回避へと導かれます。つまりMiCBTの捉え方の特徴は、私たちは外的な出来事に対してではなく、私たちが下す評価とそれと同時に生じる内受容感覚に対して反応するという点です。この見解がMiCBTのアプローチをこれまでの心理学の「行動の強化」についての従来の理解から差別化できる点です。そしてもし私たちの反応の仕方が不快感を減らし、心地よさを高めるならば、その出来事への対処として適切かどうかに関わらずその行動が強化されてゆき、それが不適切な場合は、私たちの苦悩を維持するシステムが私たちの心の中で堅固になっていきます。そしてこのシステムこそが、広範囲に及ぶ臨床的な障害に共通しているメカニズムなのだとMiCBTでは考えるのです。

 また、この心理療法の背景には、すべては移ろいゆくという「諸行無常」の現実を受け入れない限り、私たちの苦しみは続くという仏教的な理解があります。それに抵抗することで私たちの心は執着や回避という反応で条件付けられ、苦悩を維持してしまうのです。

 

 

 

1)スキーマ:客観的事実に関わらず、自己、他者、世界について個人が抱いている見方や仮定

白い花
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